税務調査に選ばれやすい会社とは?
世の中には、税務調査がよく入る会社もあれば、ほとんど入らない会社も
あります。
これはどうしてなのでしょうか。
実は税務署は、ランダムに調査先を選定しているのではなく、いくつかの
基準を元にして決めているのです。
本題に入る前に、一つ質問です。
全体の会社のうち、どのぐらいの割合の会社に税務調査が入っているかご存知ですか?
日本では毎年確定申告をしている会社というのは、約300万社あります。
そのうち、毎年13~14万社に対して税務調査が行われているのです。
おそらく件数だけを聞くと多く感じるかもしれませんが、率で考えると年間5%
程度です。
ということは、税務署側からすると、ある程度の基準を設けないと効率的に
調査が行えないのです。
それでは、税務署は調査先を選ぶにあたり、どのような基準を設けている
のかをご紹介していきます。
まず一つ目に、「毎年の所得率」があります。
所得率とは、「所得(利益)÷ 売上」で計算されます。
この所得率が年々下がっている会社は、利益を減らして、税金をごまかして
いるのではないかと疑われやすくなります。
つまり、売上は伸びているのに、利益が下がっている会社には税務調査が
入りやすいということになるのです。
反対に売上の増加にともなって、利益も伸びている会社は、実は税務調査に
入られにくいのです。
そして、二つ目は「同業他社との所得率の比較」です。
税務署は会社の所得率だけではなく、同業他社との所得率も比較しています。
同業他社に比べて所得率が低ければおかしいと思い、調査に入られる
可能性は高くなります。
続いては、「科目の金額の変動」です。
例えば、外注費や広告宣伝費など、同じ経費の科目で昨年より大幅に金額が
変動していると、税務署に疑われやすくなります。
最後は、「特別な勘定科目」です。
具体的には、「役員が退職するので退職金を支給した」であったり、
「回収できない売掛金を貸倒損失として処理した」などの場合です。
毎年発生する経費ではなく、かつ多額の科目であれば、正しく処理
されているのか、又は経費に計上するための要件を満たしているのか
などを調査で確認したくなるのです。
税務調査先を選ぶときには、まずはシステムでピックアップし、
その後調査官が自分の目で最終判断を行っていきます。
調査官は最終的にどのような会社を選ぶかというと、「あやしい」と
思われる会社です。
申告書や決算書を見て、
「売上はこんなに伸びているに、利益は減るなんておかしい」
「売上はほとんど変わっていないのに、外注費だけこんなに
増えているなんてあやしい」と思うのです。
社長からしたら、売上が増えたからといって、それ以上に投資という
意味で経費をかけているのだから、利益が出なくてもしょうがないと
思うかもしれませんが、税務署側はそうは捉えないということなのです。
それでは、何も事前に打つべき手がないかというと、そうでもありません。
このようなケースで事前に対策できることもあります。
例えば、税務署に提出する書類の一つに、「法人事業概況書」という
書類があるのですが、この用紙の裏に特記事項を書く欄が設けられて
います。
ここに理由を書いて提出するのです。
「売上を拡大するために、期中に営業マンを〇名採用したが、売上の
増加以上に、人件費の金額が増加した。」
「新商品のプロモーションで、例年以上に広告宣伝費をかけたが、
今期の売上にはその効果が反映しなかった。」
このように理由を事前に書いておくことで、調査官としては
調査先に選びにくくなるのです。